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いままでのフラスコ

No.297 2014/09/05 ~ 2014/09/08

河邊 正則 絵画展

kawabe2014dm-2.jpg河邊 正則 絵画展
9月5日(金)~9月8日(月)
12:00~19:00(最終日17:00)

絵の中に心をみる
そして自分を見つめる

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色を使うということは、線を引くことと異なり、そこに
明確な境界線はなく、ある心境からある心境へと、ゆる
やかな、または急速な変化を作り出します。

色を使うことの難しさは、私にとっては、明確に定義も
分類もされることのない、つまりは、永遠に言葉に為し
得ない心の模様に対する無力感と諦めから来ていたので
した。
捉えることも表すことも出来ない思いというものが、
行き場を求めて大気に充満していることに気付いたのは、
幼い昔のことだったと思います。

色を扱う時には、不確定性がつきまといます。青を落と
したあとで黄色を塗れば、そこに生まれるものは緑とな
り、そのようなヴァリエーションは無限に開かれていま
す。
人生もまた同じで、完全な白がその完全性を保とうとす
るならば、白の上に落ちるしかありません。
しかし実際には、既にそこに色はあり、そしてしばしば
それは白以外の色なのです。

そこで私は、白に固執するのではなく、白が白でなくな
るところ、代わって新たな色が生まれるところを見届け
たいと、自然と願わずにはいられなくなるのでした。

色を混ぜる時は、パレットの上ではなく、キャンバスの
上でそれを行い、そして成り行きに任せます。
ある色とある色が出会い、そこでなにがしかの駆け引き
を始めます。
時には赤が優勢となり、時には黄色が更にその前に出ま
す。
それが筆の先で行われることもあれば、付け根でなされ
ることもあり、水の加減や下地の色、その他いくつかの
要素が、私の知らない力学的な流れを作り出し、次第に
絵の方向性を定め、さらに次第に絵の体(てい)を為し
ていきます。
その過程において、途方もない過ちも、美しい嘘のよう
な色も、等しくめまぐるしく現れてはまた消えていき、
絵に対して完全な主導権を私から失わせます。

しかし絵と関わり続ける限り、最終的には、自分が「良
し」と思える瞬間が必ず訪れ、その時点で、エネルギー
は自然と消失し、雨がやむように、日が沈むように、絵
は独り立ちをし、それ以上の加筆も修正も望まなくなる
のです。

このようにして、絵に心は宿されていきます。

河邊 正則

http://www.kawabemasanori.com/

2014展示 夢を旅した少年 

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